生存していても裁判を起こせるのか

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患者さんが生存中のがんの見落とし裁判

患者さんが生存中のがんの見落とし裁判

がんの見落としによって患者さんが亡くなったという裁判はインパクトが強く、広く知られるケースも少なくありません。しかし、患者さんが生存中だからといってがんの見落としを訴えられないわけではないのです。

裁判では損害額や逸失利益を「もし生存していれば」という前提で計算するので、生存中は損害賠償額の算定が難しいケースも確かにあります。

かといって例外的な事例がないわけではありません。以下で事例をもとに解説しています。

被害者が生存中に起こした医療裁判の事例

「5年生存率」が低下したことに対する慰謝料

患者さんは肺がん検診の胸部X線検査で異常なしとされましたが、10カ月後に別の医療機関で検診を受けたところ肺がんの疑いを指摘されました。その1カ月後、他院で受けた胸部CTで肺がんと診断され、紹介先で手術を受けたのです。

患者さんは、初回検診での見落としによって治療が遅れ、5年生存率が低下したとして損害賠償請求を起こし、400万円の慰謝料が支払われています。

確かに統計データが示す5年生存率は低下していますが、そもそも5年生存率とは過去のデータに基づく可能性に過ぎず、この患者さんには何が起こるかわかりません。5年生存率が下がったとしても、この患者さんは10年後も20年後も生存しているかもしれないのです。そういう意味では、5年生存率の低下が損害だと認められたのは非常に画期的といえるでしょう。

判決は見落としから4年後でしたが、その時点で患者さんに再発はないようです。

そしてもうひとつ注目すべきポイントは、将来的に再発して患者さんが亡くなるようなことがあれば、改めて医師に損害賠償義務が発生する可能性があると裁判所が言及していることです。400万円の慰謝料は5年生存率の低下によるものであって、これがすべてではないと念を押しているわけです。

生存中に起こした訴訟が後の和解につながる

患者さんは長年にわたって同じクリニックで人間ドックを受けてきましたが、最後の受診から2年後、他の病院で肺がんのステージⅣ、余命6カ月と宣告されてしまいました。弁護士は患者さんの余命を考慮して短期間での解決を目指し、訴訟ではなく交渉を選択します。存命中の解決がかなわなかった場合に備え、公正証書遺言も作成しました。

通常は訴訟で初めて提出する「顕名意見書(医師の署名付き意見書)」を証拠として交渉の場で呈示するほか、難易度の高い「第三者に対する証拠保全の申立て」を行なうなど、弁護士はさまざまな策を講じて交渉を進めます。残念ながら患者さんは交渉中に亡くなられてしまいましたが、初回相談から約2年で和解が成立、損害賠償金4,630万円を獲得しました。

生存中に医師の過失を明確にするためにも早めの相談を

紹介した事例のように、患者さんが生存中に医師の過失を主張して訴訟を提起した例は多くあります。がんを見落とされたという無念を抱いたまま残された時間を過ごすより、生存中に医師の過失を明確にするべきではないでしょうか。そのためにも、早めに弁護士に相談することをおすすめします。

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弁護士/医学博士・金﨑氏について

がん見落としへの高い専門性と医療裁判の豊富な実績を持つ弁護士

弁護士法人ALG&Associatesの代表執行役員、東京弁護士会所属。医学博士の学位を保有しており、代表職の傍ら、医療過誤チームを牽引。さらに大学院の医学研究科に在籍し医学の研究を行っています。肺がん、胃がん(スキルス含む)、大腸がん、乳がん等の診断ミスに関する実績を有し、医療訴訟に関する書籍や論文も発表しています。

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「がんの見落とし」を疑っている方々へ金﨑浩之弁護士
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