そのほか悪性腫瘍
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そのほかの悪性腫瘍
定期的な検診によって早期発見が可能ながんといえば、肺がんや胃がん、大腸がん、乳がん、子宮頸がんなどが挙げられます。しかし、一方では早期発見が難しいがんや、早期発見できたとしても経過にあまり変わりがないがんもあります。
ここでは血液がんのひとつとして知られ、見落としに関する判例も多い悪性リンパ腫について紹介します。
悪性リンパ腫と確定診断するまでの基本的な検査
発見までの流れ、どんな検査を行うのか
悪性リンパ腫は白血球の一種であるリンパ球ががん化する病気です。がん細胞の形態や特性によって大きく「B細胞リンパ腫」「T/NK細胞リンパ腫」「ホジキンリンパ腫」に分類されますが、細かく分けていくと100種類近くの病型があります。
基本的な検査の中でも重要なのはリンパ節生検で、悪性リンパ腫を疑う場合は診断と同時に病型も確定させる検査です。このほか、リンパ腫の広がりや全身状態を詳しく調べるため、超音波検査やCT検査、骨髄検査などが行われます。
リンパ節生検
腫れているリンパ節の一部を採取し、顕微鏡で観察して診断を確定する検査です。正確に診断するため、検体は染色体検査や遺伝子検査に使用することもあります。
超音波検査
超音波の反射を利用して、腹部のリンパ節の腫れや肝臓、腎臓など臓器に異常がないか調べる検査です。
CT検査
患者さんの身体にX線を照射し、身体の断面を描出した画像で病変の大きさや広がりを調べます。より正確な診断のため、造影剤を使用することが多くあります。
骨髄検査
腸骨(腰の骨)などに針を刺して骨髄液や骨髄組織を採取し、そこに異常細胞がないか調べる検査です。顕微鏡で観察するほか、異常細胞の表面の特徴や染色体の異常を調べる検査を行うこともあり、これらは悪性リンパ腫の病型を決める上での重要な情報になります。
罹患率、死亡率
国立研究開発法人国立がん研究センター公式サイトの統計データ(※)によると、2019年に新たに悪性リンパ腫と診断された患者さんは36,638例に上り、2020年の死亡数は13,786人、人口10万人に対する死亡率は11.2人となっています。
近年は化学療法が格段の進歩を遂げていますが、それでも悪性リンパ腫の死亡数は緩やかに増加しています。
※参照元:国立研究開発法人国立がん研究センター公式サイト「がん種別統計情報 悪性リンパ腫」
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/25_ml.html
悪性リンパ腫のタイプと進行、ステージ
前述のとおり、悪性リンパ腫にはさまざまなタイプがあり、病変が小さく経過観察が可能なほど悪性度が低いものから、急激に進行して早急な治療が必要なほど悪性度が高いものまで、実にさまざまです。したがって、悪性リンパ腫に関しては、正確な病理組織診断と悪性度の分類が、適切な治療方針を決める上で非常に重要です。
また、悪性リンパ腫のステージ(病期)分類としては、WHO(世界保健機関)の分類が広く用いられています。他の固形がんでは原発巣の大きさやリンパ節転移の有無、遠隔転移の有無といった要素でステージが決まりますが、悪性リンパ腫は固有の病期分類で、Ⅰ期とⅡ期を限局期、Ⅲ期とⅣ期を進行期とした4段階に分けられます。
具体的には、病変が1つのリンパ節領域にとどまっているものをⅠ期、病変が横隔膜の同じ側にある2つ以上のリンパ節領域にわたっているものをⅡ期、病変が横隔膜の両側にある複数のリンパ節領域にわたっているものをⅢ期、リンパ節外臓器にびまん性または多発病変、リンパ節病変に加えて非連続性のリンパ節外病変がみられるものをⅣ期としています。
悪性リンパ腫のリスク要因
残念ながら、悪性リンパ腫のリスク要因として確かなものはほとんど解明されていません。しかし、一部の悪性リンパ腫はウイルス感染が原因で発症することがあります。
たとえば、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)は成人T細胞白血病リンパ腫の原因になり得ます。胃に発生するMALT(マルト)リンパ腫は、その患者さんのほとんどがピロリ菌に感染して胃炎を起こしており、ピロリ菌を除菌すると悪性リンパ腫も縮小する場合もあります。とはいえ、感染すれば必ず悪性リンパ腫を発症するわけではありません。
また、悪性リンパ腫のがん細胞には染色体異常がみられる場合があります。つまり、遺伝子の異常が悪性リンパ腫の発症に関わっている可能性があるということです。異常の原因は加齢や慢性的な炎症疾患、放射線の被ばくなどが考えられていますが、いずれも明らかにはなっていません。
悪性リンパ腫の見落とし事例
悪性リンパ腫の見落としでは、以下のような事例があります。
- 胆石で手術を受けた患者さんが1年後に巨大な悪性リンパ腫を発見され、手術当時のX線写真での見落としが判明、治療開始の遅れによって長期生存の可能性が失われた
【このページの参考文献】
・(書籍)『国立がん研究センターの正しいがん検診』中山 富雄 監修(小学館)
・国立研究開発法人国立がん研究センター「がん情報サービス」(https://ganjoho.jp/public/cancer/ML/index.html)
・一般社団法人 日本癌治療学会 がん診療ガイドライン(http://www.jsco-cpg.jp/hematopoietic-tumor/)
・国立がん研究センター中央病院公式サイト(https://www.ncc.go.jp/jp/ncch/division/rcc/about/malignant_lymphoma/index.html)
がん見落としへの高い専門性と医療裁判の豊富な実績を持つ弁護士
弁護士法人ALG&Associatesの代表執行役員、東京弁護士会所属。医学博士の学位を保有しており、代表職の傍ら、医療過誤チームを牽引。さらに大学院の医学研究科に在籍し医学の研究を行っています。肺がん、胃がん(スキルス含む)、大腸がん、乳がん等の診断ミスに関する実績を有し、医療訴訟に関する書籍や論文も発表しています。