裁判の流れと勝率
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医療裁判の進み方
医療裁判を考えている場合に、あらかじめ押さえておくべき民事裁判の手順のポイントを解説します。
準備が整ったら提訴
まずは争点の絞り込み
開示請求や証拠保全手続きで入手した資料を基に検討した結果、医師や医療機関の責任を裁判で追及すべきだと判断した場合は、請求したい内容をまとめた「訴状」を裁判所に提出します。訴状が裁判所に受理されると、裁判がスタートします。
その後は、被告が訴状への反論をまとめた「答弁書」を提出。さらに原告と被告のそれぞれが主張をまとめた「準備書面」を互いに提出し、争点を絞り込んでいきます。争点が定まると、医師や看護師、患者の家族などが証人尋問を受けます。原告と被告への尋問も実施されます。
審理が十分に尽くされたと裁判官が判断すると弁論終結となり、判決が出されます。ただし、判決に至る前に、双方が話合って納得できる結論を得るための和解が試みられることも少なくありません。和解が成立した場合は、そこで裁判が終わります。
裁判・和解までどのくらいかかる?
民事訴訟は第一審(地裁)段階が1年以内に終了するのが一般的ですが、医療過誤による訴訟の場合は、2~3年かかることが多く、場合によっては5年以上というケースも出てきます。これは、医療行為に関する高度な知識が必要とされ、争点整理や証拠調べに時間を要するなど、審理が慎重に進められることが多くなることが原因になっています。
医療裁判は勝てるのか
統計上の勝率は約2割だが、訴訟上の和解が50%以上
最高裁が出している資料「地裁民事第一審通常訴訟事件・医事関係訴訟事件の認容率」によると、令和3年に医療訴訟で認容(一部認容を含む)された割合は20.1%で、過去10年の勝率はおおむね20%前後で推移しています。(※1)
しかし、個々の事案について「勝てるのかどうか」は、単純な統計の数字で見通せるものではありません。どんな医療行為があったのか、どんな資料が準備できるのかなど具体的な事案の内容によって大きく変わります。
さらには、医療裁判は和解で終結するケースが非常に多いことも特徴です。審理期間が長くなり、いつ判決が出るのか見通せないような状況になると、和解が成立しやすくなる傾向があります。最高裁の「医事関係訴訟事件の終局区分別既済件数及びその割合」によると、令和3年に和解で終結した医療裁判の数は、全体の52.5%にも上ります。(※2)
※1 参照元:【PDF】最高裁判所サイト「医事関係訴訟委員会 医事関係訴訟に関する統計資料」より
【PDF】地裁民事第一審通常訴訟事件・医事関係訴訟事件の認容率
(https://www.courts.go.jp/saikosai/vc-files/saikosai/2022/220701-iji-toukei3-ninyouritsu.pdf)
※2 参照元:【PDF】最高裁判所サイト資料「医事関係訴訟事件の終局区分別既済件数及びその割合」
(https://www.courts.go.jp/saikosai/vc-files/saikosai/2022/220701-iji-toukei2-syukyokukubunbetsukisai.pdf)
紛争の解決には、判決で勝つだけでなく、できるだけ有利な条件で和解に持ち込むことも念頭に置く必要があります。そのためにも、できるだけ早く弁護士に相談することが重要です。
追及すべき責任とは
医療裁判で、患者側が追及する医師・医療機関の民事上の責任は、「不法行為責任」と「債務不履行責任」の2種類に大別されます。いずれの場合も立証責任は患者側にあります。
不法行為責任は、医療ミスの行為そのものの責任のことで、医師個人が被告となります。一方の債務不履行責任は、診療契約で定められた医療行為が適正に実施されなかった責任を問います。医師が勤務医の場合は、債務不履行責任を問う相手は医療機関になります。
一方で、医師や医療機関がミスを回避できると分かっていたのに対処していなかったり、ミスが起きる可能性を認識していたりして悪質性が高い場合、警察や検察が刑事責任を追及することがあります。多くの場合に適用されるのが、刑法の「業務上過失致死傷罪」です。
弁護士に相談して判断を
法律の専門家でなければ対処が難しい場面が少なくない民事訴訟の中でも、医療過誤に基づく医療訴訟は、極めて専門性の高い分野です。どんな行為についてどんな責任を問うのか、裁判をどう進めるのかを判断するためにも、できるだけ早く弁護士に相談することが重要です。

がん見落としへの高い専門性と医療裁判の豊富な実績を持つ弁護士
弁護士法人ALG&Associatesの代表執行役員、東京弁護士会所属。医学博士の学位を保有しており、代表職の傍ら、医療過誤チームを牽引。さらに大学院の医学研究科に在籍し医学の研究を行っています。肺がん、胃がん(スキルス含む)、大腸がん、乳がん等の診断ミスに関する実績を有し、医療訴訟に関する書籍や論文も発表しています。

