子宮頸がん
このサイトは弁護士法人ALG&Associatesをスポンサーとして、Zenken株式会社が運営しています。
子宮頸がんと確定診断するまでの基本的な検査
発見までの流れ、どんな検査を行うのか
子宮頸がんを疑う場合は、最初に子宮頸部の細胞診を行うのが一般的です。その結果によって、子宮頸がんの発症リスクを高めるヒトパピローマウイルス(HPV)の検査を行う場合もあります。悪性疾患の可能性が高ければコルポスコピー(膣拡大鏡)による組織診を行います。
子宮頸がんと診断されたら、超音波検査やCT検査、MRI検査、PET検査などを行い、子宮の周辺や離れた臓器にがんが広がっていないか調べます。子宮に近い膀胱や直腸を内視鏡で観察し、がんの浸潤の有無を確認する場合もあります。
細胞診
子宮頸部の細胞を専用のブラシでこすり取り、顕微鏡で観察する検査です。子宮頸がん検診でも有効性が証明されており、早期の子宮頸がんはもちろん、前がん病変の状態を見つけることも可能です。妊娠中でも安全に検査を受けられるので、妊婦検診として細胞診を実施している医療機関もあります。検査は月経中・月経直後は避け、月経終了から3~7日目後がタイミングとして望ましいとされています。
検査結果はベセスダシステムという国際分類に基づいて報告され、要精密検査の判定が出た場合も「6カ月後に再検査」「ただちにコルポスコピー検査を要する」など細かい指示があり、それによって今後の対応も変わります。
コルポスコピー
細胞診で異常がみられた場合は、コルポスコピー(膣拡大鏡)による検査を行います。具体的には子宮頸部を拡大して観察することで「正常」「異常」「浸潤がん」「評価不能」などに分類し、必要に応じて病変が疑われる部位の組織を採取して病理検査を行います。
HPV検査
細胞診で採取した検体が、ヒトパピローマウイルス(HPV)の中でも子宮頸がん発症リスクの高いタイプに感染しているかどうかを調べる検査です。具体的には、細胞診の結果が「意義不明な異型扁平上皮細胞」だった場合はこの検査を受けます。もし陽性であれば、コルポスコピーによる精密検査が必要です。たとえがんの疑いがなくてもHPV検査が陽性であれば、精密検査までは不要でも必ず定期検査を受けるように勧められます。
罹患率、死亡率
国立研究開発法人国立がん研究センター公式サイトの統計データ(※)によると、2019年に新たに子宮頸がんと診断された患者さんは10,879例に上り、2020年の死亡数は2,887人、人口10万人に対する死亡率は4.6人となっています。
いわゆる5大がん(肺がん、乳がん、胃がん、肝臓がん、大腸がん)の死亡率が低下ないし横ばいであることに対して、子宮頸がんの死亡率は上昇傾向にあります。この背景には、HPVワクチン接種率の低さなどの影響があると考えられます。
※参照元:国立研究開発法人国立がん研究センター公式サイト「がん種別統計情報 子宮頸部」
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/17_cervix_uteri.html
子宮頸がんのタイプと進行、ステージ
子宮頸がんはいくつかの組織型に分類されますが、代表的なものが「扁平上皮がん」と「腺がん」で前者が全体の8割程度、後者が2割程度を占めています。さらに扁平上皮がんは、がんの前段階(前がん病変)である「異形成」、がんが粘膜表面にとどまっている「上皮内がん」、粘膜より深く広がっている「浸潤がん」に分類されます。
がんの進行度を表すステージ(病期)では、子宮頸がんの場合は上皮内がんも前がん病変に含まれます。浸潤がんはサイズや深さ、リンパ節転移の有無、遠隔転移の有無などによってⅠ期からⅣ期までの大きく4段階に分類され、さらにステージごとにA~BないしCまで細分化されています。
前がん病変やⅠA期ではまず組織診を行い、その結果によって治療方針を決めていくのが一般的です。IB期やⅡ期では手術と放射線療法または放射線療法と薬物療法を組み合わせた治療、Ⅲ期やⅣA期では放射線療法と薬物療法を組み合わせた治療、ⅣB期では薬物療法がそれぞれ中心となります。
子宮頸がんのリスク要因
前述のとおり、子宮頸がんの発生にはヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が関係しており、実際に子宮頸がん患者さんの90%に感染が認められています。しかし、HPVに感染すれば必ず子宮頸がんを発症するわけではありません。そもそもHPVは、男女問わず誰でも一度は感染したことがあるくらいありふれたウイルスです。
主な感染経路は性行為で、性交経験のある女性の半数以上はHPVに感染しています。仮に感染しても、ほとんどが免疫によって排除されます。しかし一部のケースで長期間の感染が続いて細胞が前がん病変となり、さらにその一部が子宮頸がんに移行していきます。また、若年での性交経験や性的パートナーが多いことも発症リスクにつながります。出産回数の多さや経口避妊薬(ピル)の長期間服用、喫煙(受動喫煙を含む)もリスクを高めます。
子宮頸がんの見落とし事例
子宮頸がんの見落としでは、以下のような事例があります。
・産前産後に不正性器出血を繰り返していたのに必要な検査が行われなかった結果、他院で進行した子宮頸がんが発見され、1年後に亡くなってしまった。【このページの参考文献】
・(書籍)『国立がん研究センターの正しいがん検診』中山 富雄 監修(小学館)
・国立研究開発法人国立がん研究センター「がん情報サービス」(https://ganjoho.jp/public/cancer/cervix_uteri/index.html)
・一般社団法人 日本癌治療学会 がん診療ガイドライン(http://www.jsco-cpg.jp/hematopoietic-tumor/)
・公益社団法人 日本婦人科腫瘍学会 子宮頸癌治療ガイドライン2022年版(https://jsgo.or.jp/guideline/keiganguide2022.html)

がん見落としへの高い専門性と医療裁判の豊富な実績を持つ弁護士
弁護士法人ALG&Associatesの代表執行役員、東京弁護士会所属。医学博士の学位を保有しており、代表職の傍ら、医療過誤チームを牽引。さらに大学院の医学研究科に在籍し医学の研究を行っています。肺がん、胃がん(スキルス含む)、大腸がん、乳がん等の診断ミスに関する実績を有し、医療訴訟に関する書籍や論文も発表しています。

