大腸がん
このサイトは弁護士法人ALG&Associatesをスポンサーとして、Zenken株式会社が運営しています。
大腸がんと確定診断するまでの基本的な検査
発見までの流れ、どんな検査を行うのか
一般的な大腸がん検診では、便潜血検査が行われます。この検査は便を採取するだけという簡単な方法でありながら、死亡率の減少効果が科学的にも明らかになっています。精密検査としては大腸内視鏡検査(大腸カメラ)の効果も明らかで、便潜血検査が陽性の場合はこの検査が勧奨されます。他にも自治体などが実施する対策型検診で行われるほか、近年は人間ドックなどの任意型検診でも検査項目に含まれるようになっています。
大腸がんの正確な部位や広がりを調べるために、状況に応じて注腸造影検査(注腸バリウム検査)やCT検査、MRI検査などが行われることもあります。
便潜血検査
腸内を移動していく便が大腸がんに接触すると、血液が付着します。その血液の有無を調べるのが便潜血検査で、便に含まれるヘモグロビンを検出するので微量の血液でも発見できます。この検査には1日法と2日法があり、大腸がん検診で実施されているのは2日法です。前述のとおり便潜血検査は死亡率の減少に十分な効果があり、海外の研究では毎年連続して検査を受けることで大腸がんの死亡率が33%も減少すると報告されています。
副作用や事故のリスクがなく安全で、食事や服薬の制限がないのもこの検査のメリットです。簡便で低コストという面も他の検査より優れています。ただ、大腸がんがあっても見つからない場合があること(偽陰性)、大腸がんがないのに要精密検査にされる場合があること(偽陽性)はデメリットといえるでしょう。
大腸内視鏡検査
肛門から内視鏡を挿入して大腸全体(直腸から盲腸まで)を詳細に調べる検査で、俗に大腸カメラとも呼ばれています。もしポリープなどの病変が見つかれば、その病変全体もしくは組織の一部を採取し(生検)、病理検査が行われます。病変の表面構造をより精密に調べるため、粘膜の模様や毛細血管の輪郭、色を強調する画像強調観察や拡大観察なども可能です。
このように大腸内視鏡検査はがんを正確に診断できる精度がきわめて高く、数ミリ程度の小さながんや平坦なポリープなども発見でき、大腸がんの死亡率減少にも大きく貢献しています。
罹患率、死亡率
国立研究開発法人国立がん研究センター公式サイトの統計データ(※)によると、2019年に新たに大腸がんと診断された患者さんは155,625例に上り、その半数以上が男性です。ただ、この数値には結腸がんや直腸がんは含まれておらず、それらも大腸がんに含めるとすべてのがんの中で最も罹患数が多いということになります。
2020年の死亡数は51,788人で、人口10万人に対する死亡率は42.0人となっています。この死亡率は、まだ大腸がん検診の受診率がそれほど高くないことを表しているのかもしれません。
※参照元:国立研究開発法人国立がん研究センター公式サイト「がん種別統計情報 大腸」
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/67_colorectal.html
大腸がんのタイプと進行、ステージ
大腸がんの発生には2つのタイプがあり、ひとつは良性のポリープが大きくなってがんに変化するパターン、もうひとつは正常な大腸粘膜からがん細胞が発生するパターンです。日本人はS状結腸や直腸に発生しやすいといわれています。
発生した大腸がんは次第に大腸の壁に深く侵入し、進行して大腸の壁の外まで広がると、がん細胞が腹腔内に散らばっていきます(腹膜播種)。また、がん細胞がリンパ液の流れに乗ってリンパ節転移を起こしたり、血液の流れに乗って肝臓や肺など離れた臓器に転移したりします。転移した肺や肝臓の腫瘤が、転移元の大腸がんより先に見つかることもあります。
がんの進行度はステージ(病期)としてローマ数字を使って表記分類し、ステージが進むにつれてがんが進行していることを示します。大腸がんのステージは0期~Ⅳ期までの5段階に分けられ、がんの深達度やリンパ節転移・遠隔転移の有無によって決められます。
0期~Ⅲ期の大腸がんではまず切除が可能かどうかを判断し、可能な場合は内視鏡手術もしくは開腹手術を検討します。Ⅲ期または再発リスクの高いⅡ期の場合は、手術でがんを切除してから化学療法を行うことが多くあります。Ⅳ期はがんが他の臓器に転移しているので、それを切除できるかどうかを判断し、原発巣とともに切除が可能であれば手術を検討します。不可能であれば、化学療法や放射線療法など手術以外の治療が基本となります。
大腸がんのリスク要因
大腸がんは生活習慣との関係が深く、国内で大腸がんが増えている背景には食生活の欧米化の影響があると考えられます。特に肉類(赤身肉や加工肉)や卵、乳製品をはじめとした動物性たんぱく質や脂肪分の摂取量は著しく増えており、その反面、食物繊維や野菜、果物の摂取量が減っていることも指摘されています。食物繊維を多く摂ると、発がん物質を含む便が排出されやすくなり、それが結果として大腸がんを防ぐことになるからです。
また、運動不足も大腸がんのリスク要因とされるほか、体脂肪の過多や肥満、高身長といった身体的な要素も大腸がんのリスクにつながるといわれています。アルコールや喫煙も大腸がんの発生リスクを高めることがわかっており、女性の直腸がんと喫煙の関連を示唆する報告もあります。
大腸がんの見落とし事例
大腸がんの見落としでは、以下のような事例があります。
- 便潜血陽性の精密検査を大学病院で受けたが異常なしとされ、その10カ月後に肝転移を伴う進行大腸がんが判明、そのわずか1カ月後に亡くなった
- 内科通院中の患者さんが下痢や下血を訴えて外科を受診したが、大腸がんの典型的な症状があったにもかかわらず直ちに検査が行われず、結果として治療開始が遅れた
【このページの参考文献】
・(書籍)『国立がん研究センターの正しいがん検診』中山 富雄 監修(小学館)
・国立研究開発法人国立がん研究センター「がん情報サービス」(https://ganjoho.jp/public/cancer/colon/index.html)
・一般社団法人 日本癌治療学会 がん診療ガイドライン(http://www.jsco-cpg.jp/colorectal-cancer/)
がん見落としへの高い専門性と医療裁判の豊富な実績を持つ弁護士
弁護士法人ALG&Associatesの代表執行役員、東京弁護士会所属。医学博士の学位を保有しており、代表職の傍ら、医療過誤チームを牽引。さらに大学院の医学研究科に在籍し医学の研究を行っています。肺がん、胃がん(スキルス含む)、大腸がん、乳がん等の診断ミスに関する実績を有し、医療訴訟に関する書籍や論文も発表しています。