【大腸がん】2つの科における見落とし

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目次

本事例は、下記サイトの情報を参照しています。

※参照元:民間医局(株式会社メディカル・プリンシプル社運営)「医療過誤判例集」
https://www.doctor-agent.com/service/medical-malpractice-Law-reports/2021/Vol214

事例の要点と結果

内科の患者さんが外科で大腸がんと診断

患者さんは高血圧のため病院の内科に通院していましたが、翌年に軟便や肛門の腫れ、出血がみられたため同院の外科を受診、それぞれ通院を続けていました。ところが外科を受診してから約2カ月後、大腸がんと転移性の肝がんが見つかり、わずか1か月後に亡くなってしまったのです。

本事例は、担当医が別の診療科を受診する必要性に関して注意義務を果たしていないこと、治療の過程でがんを見落とした可能性が高いことによって訴訟が起こされました。最終的には150万円の慰謝料が認められています。

経緯

直ちに大腸がんを疑って検査すべきだった

裁判では、内科医は患者さんから出血の訴えがあった際に外科の受診を2回にわたって促しており、その面では相手方病院に過失はないと判断します。

しかし、外科の初診時には直腸診と直腸鏡検査によって内痔核と診断、症状が落ち着くまで経過観察とされています。これに対しては、直ちに大腸がんを疑って必要な検査を実施すべきだったとして過失を認めました。

患者さんは外科の問診票にあった下痢、血便、便が細い、腹部の張り、体重減少の項目に○を付け、医師に対しても軟便や肛門の腫れ、出血を訴えていました。

裁判所は、これらは大腸がんの典型的な症状であり、担当医が内痔核の存在を認めたとしても、直ちに大腸がんを疑って必要な検査を実施すべき注意義務があったとしたのです。

ただし、直ちに検査を実施していたとしても転移の状況から延命できていたという蓋然性は認められず、可能性の侵害に対する慰謝料の支払いを命じるにとどまっています。

争点

問診は診断の基礎である

患者側は、適切な治療を受けられるように適切な時期に外科に紹介すべきだったと主張しましたが、実際に内科担当医は外科の受診を促しており、外科担当医に診療内容を告知して転科の措置を取ることまでは求められないと裁判所は判断しています。

しかし、もうひとつの争点である大腸がんの見落としに関しては、問診の結果が大腸がんの典型的な症状を示しており、内痔核の症状としては説明がつかないこと、内痔核の症状が落ち着いてから検査を実施するのは遅いとして、病院側の過失を認めています。問診は問診票の内容も含めて診断の基礎になるものであり、十分に確認することが求められているといえるでしょう。

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弁護士/医学博士・金﨑氏について

がん見落としへの高い専門性と医療裁判の豊富な実績を持つ弁護士

弁護士法人ALG&Associatesの代表執行役員、東京弁護士会所属。医学博士の学位を保有しており、代表職の傍ら、医療過誤チームを牽引。さらに大学院の医学研究科に在籍し医学の研究を行っています。肺がん、胃がん(スキルス含む)、大腸がん、乳がん等の診断ミスに関する実績を有し、医療訴訟に関する書籍や論文も発表しています。

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