【胃がん】生検の再検査を7年放置・訴訟上の和解
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本事例は、下記サイトの情報を参照しています。
※参照元:【本メディア監修】弁護士法人ALG&Associates「癌(がん)・その他の腫瘍の医療過誤 解決事例一覧」
https://www.avance-lg.com/customer_contents/iryou/jirei/gan/gan_jirei13/
事例の要点と結果
必要な再検査が行なわれず、胃がんによって死亡
患者さんはかかりつけのクリニックで上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)を受けましたが、病理検査(※1)を行った外部の病理医は、胃から採取した組織ががんかどうか判断できないとし、主治医に書面報告で再検査を求めました。
しかし、主治医はその後7年間にわたって一度も生検(※2)の再検査を行なわず、患者さんは胃がんのため亡くなってしまったのです。ご遺族は本人の無念を晴らすため弁護士に相談、最終的には相手方が損害賠償金4,000万円を支払う条件で訴訟上の和解が成立しています。
経緯
再検査が行なわれていれば胃がんが見つかっていた
まずは訴訟ではなく交渉での解決を試みましたが、これまでの相手方の態度から責任を認めない可能性が濃厚だったため、そのような回答があり次第、訴訟を提起する方針としました。
本事例は予想どおり訴訟に至り、患者側は再検査を遅くとも初回検査から2カ月経過後に実施すべき注意義務と、その後も年1回程度は同様の検査を実施すべき注意義務が相手方クリニックにあったと主張します。
そして、これらの義務が果たされていれば胃がんの診断も遅れずに適切な治療を受けられ、亡くなることもなかったとして、不法行為または診療契約の債務不履行に基づく損賠償請求を行なったのです。
相手方はなかなか非を認めませんでしたが、提訴してから約1年11カ月を費やした結果、相手方が損害賠償金を支払った上での訴訟上の和解(※3)に至りました。
争点
初回検査の病変と死因の因果関係
訴訟では前述の注意義務違反に加えて、初回検査で見つかった病変と死因となった病変の同一性の有無という因果関係、そして損害額が争点となっています。
訴訟の終盤で相手方が医学意見書を提出しましたが、それに対して適切に反論、弾劾したことや、裁判所の心証開示によって状況を的確に把握し、注意義務違反(※4)や因果関係について理由に基づく弁論を丁寧に行なっていったことが、高額な損害賠償金の獲得につながったと思われます。
- 用語解説
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- (※1)病理検査
生検で採取された組織の一部を顕微鏡で詳しく調べる検査です。がんを疑う場合は、細胞の形態や悪性度などを病理医が厳密に調べて診断します。 - (※2)生検
内視鏡や手術によって、病理検査のために組織の一部を採取することです。身体の外から超音波やX線でガイドしながら細い針を刺して組織を採取する方法もあります(経皮的針生検)。 - (※3)訴訟上の和解
訴訟中に当事者双方が主張を譲歩し、権利関係を認めた上で訴訟を終わらせる合意をすることです。 - (※4)注意義務違反
医師の過失を注意義務違反といいます。どのような注意義務があったかは患者側、つまり原告が設定し、具体的に違反を主張・立証しなければなりません。
- (※1)病理検査

がん見落としへの高い専門性と医療裁判の豊富な実績を持つ弁護士
弁護士法人ALG&Associatesの代表執行役員、東京弁護士会所属。医学博士の学位を保有しており、代表職の傍ら、医療過誤チームを牽引。さらに大学院の医学研究科に在籍し医学の研究を行っています。肺がん、胃がん(スキルス含む)、大腸がん、乳がん等の診断ミスに関する実績を有し、医療訴訟に関する書籍や論文も発表しています。

