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【胃がん】国立病院の内視鏡検査での見落とし・訴訟上の和解

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目次

本事例は、下記サイトの情報を参照しています。

※参照元:【本メディア監修】弁護士法人ALG&Associates「癌(がん)・その他の腫瘍の医療過誤 解決事例一覧」
https://www.avance-lg.com/customer_contents/iryou/jirei/gan/gan_jirei05/

事例の要点と結果

見落としによってスキルス胃がんが進行

患者さんは定期的に胃がん検診を受けていましたが、胃の一部に異常が見つかったため、某国立病院で胃カメラによる精密検査を受けることになりました。

その結果、軽度の胃炎があるだけでその他の異常は認めないとされましたが、2年半後、同じ部位に原発巣(※1)を認めるステージⅣまで進行したスキルス胃がんが見つかったのです。すでに腹膜播種(※2)、卵巣転移も生じており、患者さんは数カ月後に亡くなってしまいました。

本事例は提訴から3年を経て、相手方病院に責任があるという前提で3,000万円の訴訟上の和解が成立しています。

経緯

専門家の意見書なしでの提訴を戦い抜く

本事例は提訴に先駆けて複数の消化器専門医に相談していますが、いずれも相手方病院に責任はないという回答でした。しかし、その内容はいずれも不合理で大きな矛盾を抱えており、逆にそれが専門家の意見書なしで提訴に踏み切るきっかけになっています。

とはいえ、患者側に有利な意見書があるわけではありません。医学文献だけを証拠として丁寧に立証した結果、裁判所に「鑑定の必要性が高い」という心証を抱かせるに至っています。ただし、本事例のように相手方が国立病院の場合は、事前の相談でもそうだったように鑑定人が被告病院をかばう可能性もあります。

しかし幸いにも、3人の医師による書面鑑定(※3)を実施したところ、1人が相手方病院の責任を認めました。それを突破口として残り2人の鑑定人の意見の不合理さや矛盾を指摘し、裁判所に相手方病院の有責を認めさせることに成功したのです。

争点

スキルス胃がんに対する理解の矛盾

本事例は患者さんの胃がんがスキルスという悪性度が高いタイプだったため、裁判所が鑑定の必要性を認めるか否かが大きなポイントになりました。一般的にスキルスは悪性度が高く進行が早いため、早期発見が難しいと考えられています。ですが、そこには「スキルス胃がんは進行胃がんの亜型である」という大きな矛盾があります。

スキルス胃がんとはいえ、もちろん初期の段階もありますが、その状態をスキルス胃がんと呼ぶわけではありません。スキルスに発展する胃がんの初期には陥凹所見(病変がへこんだ状態)が多く、印環細胞がん(※4)や低分化腺がん(※5)など悪性度が高いがん細胞がみられます。

ところが、検診などで早期に発見される胃がんでは、実に80%程度にこの陥凹所見が認められるのです。

この患者さんも印環細胞がんで、進行が早い胃がんでした。ということは、2年半前の見落としの時点では初期だった可能性が高いということになります。この事実によって患者側の有利性が見え、医学的な知見を丁寧に説明したことが鑑定の実施につながったといえるでしょう。

仮にすべての鑑定人が相手方病院をかばってしまうと、有責を前提とした高額の和解は難しかったでしょう。本事例では、1人の鑑定人が相手方病院に責任があるとした内容の鑑定書を提出してくれたことが決め手になったといえます。

用語解説
  • (※1)原発巣
    最初にがんが発生した部位のことです。たとえば最初に胃がんが発生して、いずれ肺に転移したとすると、原発巣は胃がんということになります。
  • (※2)腹膜播種
    胃腸などの内臓とお腹の壁の内側を覆う膜を腹膜といい、腹膜播種とは腹膜にがんが転移することを指します。種をまいたようにがん細胞がお腹の中に散らばっていくことから付けられた呼び名です。
  • (※3)書面鑑定
    専門性の高い分野において、特別な学識経験を持つ第三者に書面で意見を求める手続きのことです。特に医療訴訟は専門性が高く、医師に意見を求めなければ適切な判断が困難になるケースが多くあります。
  • (※4)印環細胞がん
    未分化型の代表的ながんで、ここで言えば、スキルスがんの卵。未分化型のがんは悪性度が高い(進行しやすい)。
  • (※5)低分化腺がん
    分裂をさかんにしている未成熟の細胞ががん化したもの。細胞分裂が速く、増殖や転移が多く見られる悪性度の高いがんです。
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弁護士/医学博士・金﨑氏について

がん見落としへの高い専門性と医療裁判の豊富な実績を持つ弁護士

弁護士法人ALG&Associatesの代表執行役員、東京弁護士会所属。医学博士の学位を保有しており、代表職の傍ら、医療過誤チームを牽引。さらに大学院の医学研究科に在籍し医学の研究を行っています。肺がん、胃がん(スキルス含む)、大腸がん、乳がん等の診断ミスに関する実績を有し、医療訴訟に関する書籍や論文も発表しています。

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「がんの見落とし」を疑っている方々へ金﨑浩之弁護士
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