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【乳がん】集団検診(マンモ)での見落とし・訴訟上の和解

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目次

本事例は、下記サイトの情報を参照しています。

※参照元:【本メディア監修】弁護士法人ALG&Associates「癌(がん)・その他の腫瘍の医療過誤 解決事例一覧」
https://www.avance-lg.com/customer_contents/iryou/jirei/gan/gan_jirei08/

事例の要点と結果

集団検診で乳がんを見落とされ、亡くなった事例

患者さんは集団検診のオプションでマンモグラフィーによる乳がん検診を受けましたが、異常なしと診断されたにも関わらず1年後のマンモグラフィー、超音波検査、病理検査(※1)によって乳がんと診断されます。

その時点ですでにリンパ節と脳に転移していたため臨床病期(※2)はⅣ期とされ、化学療法が行なわれましたが患者さんは10カ月後に亡くなってしまいました。

ご遺族は本人が集団検診の時点ですでに乳がんを発症していた可能性を疑い、弁護士に相談します。医療調査から始まった本事例は、最終的に2,000万円で訴訟上の和解が成立しています。

経緯

協力医の否定的な見解を乗り越えて訴訟を提起

弁護士が医療調査で協力医(※3)に相談したところ、集団検診のマンモグラフィーに乳がんを疑わせる所見(カテゴリー3(※4)、もしくは4)が認められました。

ただし、見落としの1年後には臨床病期がⅣ期、その10カ月後には亡くなるという進行の早さから集団検診の時点でがんが進行していたと考えられ、協力医は見落としと死亡の因果関係は疑問だという見解を示しています。

しかし、弁護士は協力医の意見に疑問を感じました。患者さんの乳がんは「乳頭腺管がん(※5)」というタイプで予後も良好とされ、リンパ節転移の可能性も低いとされています。そして分子生物学的マーカー(※6)からみても、ホルモン療法を受けることなどによって改善が期待できるのです。

そうであれば、集団検診の時点では転移を生じていなかった可能性も十分にあり、治療を開始していれば根治または長期生存もあり得たと考えられました。たとえその立証が困難でも、いわゆる「相当程度の可能性法理」によって数百万円の慰謝料が認められる見込みがあるため訴訟に踏み切ったのです。

争点

乳がん検診の特殊性を丁寧に主張

相手方は集団検診時のマンモグラフィーの所見については争ってきませんでしたが、見落としについては反論しました。

その根拠は肺がん検診での見落としに関する多くの棄却判例です。乳がんでも集団検診には変わりなく、異常を発見するのは困難であり、実際に集団検診の肺がん見落としは患者側のほとんどが裁判で棄却されているというのが相手方の主張でした。

しかし、乳がん検診は肺がん検診とは違って受診するのは女性だけ、しかもマンモグラフィーはオプションなので受診者の数は限られています。それにマンモグラフィーは読影医の認定を受けた医師が担当しており、専門医が担当するわけではない肺がん検診とは事情がまったく違います。

このような背景を丁寧に論じたところ、相手側からの反論はまったくなかったのです。

因果関係については、患者さんの乳がんは予後が良好なタイプであることを、多数の医学文献を根拠に主張しました。協力医の見解が否定的だったため意見書は提出せず、鑑定も躊躇しましたが、2,000万円での和解を提案したところ一切減額されずに成立したのです。

仮に因果関係が認められると、相手方は2,000万円どころではない高額な賠償金を支払わなければなりません。相手方も「悪い話ではない」と考えたのではないでしょうか。

用語解説
  • (※1)病理検査
    生検で採取された組織の一部を顕微鏡で詳しく調べる検査です。がんを疑う場合は、細胞の形態や悪性度などを病理医が厳密に調べて診断します。
  • (※2)臨床病期
    がんの進行度を表す基準である病期分類の中で、治療開始前に画像検査や病理検査などで得られた情報で判断するものを臨床病期といいます。手術などを行なった結果で判断されるのが病理病期で、臨床病期とは異なる場合があります。
  • (※3)協力医
    患者側の弁護士をサポートし、医療事故や医療ミスの事例に対してアドバイスや援助を行なう医師です。
  • (※4)カテゴリー3
    この場合のカテゴリーとはがんの可能性を示す分類で、カテゴリー3は「良性だが、悪性の可能性を否定できない」と定義されます。本文中のカテゴリー4は「悪性の疑い」です。
  • (※5)乳頭腺管がん
    がん細胞が乳管や小葉を包んでいる膜の外に広がる乳がんを「浸潤がん」といいますが、その中でも最も予後が良好なタイプといわれているのが乳頭腺管がんです。乳がんの約20%がこのタイプで、腫瘍がキノコ状(乳頭状)に成長することからそう呼ばれています。
  • (※6)分子生物学マーカー
    組織や体液中に存在する特定の分子や細胞の有無、量を指標として、疾病の診断や治療効果、モニタリング、予後の見立てなどを行なうことです。がんの領域では組織検体だけではなく、血液や尿からもさまざまなマーカーを検出する研究が進んでいます。
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弁護士/医学博士・金﨑氏について

がん見落としへの高い専門性と医療裁判の豊富な実績を持つ弁護士

弁護士法人ALG&Associatesの代表執行役員、東京弁護士会所属。医学博士の学位を保有しており、代表職の傍ら、医療過誤チームを牽引。さらに大学院の医学研究科に在籍し医学の研究を行っています。肺がん、胃がん(スキルス含む)、大腸がん、乳がん等の診断ミスに関する実績を有し、医療訴訟に関する書籍や論文も発表しています。

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「がんの見落とし」を疑っている方々へ金﨑浩之弁護士
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