【眼窩の腫瘤(腺様嚢胞癌)】MRI検査での見落とし・調停成立
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本事例は、下記サイトの情報を参照しています。
※参照元:【本メディア監修】弁護士法人ALG&Associates「癌(がん)・その他の腫瘍の医療過誤 解決事例一覧」
https://www.avance-lg.com/customer_contents/iryou/jirei/gan/gan_jirei10/
事例の要点と結果
がんの見落としで遅れた治療、そして失明
患者さんは甲状腺機能亢進症による眼球突出のため、眼科専門病院を受診してMRI検査を受けました。その際に異常の指摘は受けませんでしたが、実際のMRI画像では鼻や副鼻腔が左右非対称で、右側には異常な像が写し出されていました。
約2年後にその病院を再び受診してMRI検査を受けたところ、右鼻腔から眼窩(眼球や周辺組織が収まっている頭蓋骨のくぼみ)に腫瘤が見つかったのです。
紹介によって他院の耳鼻科を受診した患者さんは手術を受け、病理検査で腺様嚢胞がん(※1)と診断されます。その後のPET-CT検査などで腫瘍が残っていないか確認したところ、腫瘍は広範囲の組織に浸潤していることがわかりました。
それに対して患者さんは26回にわたる陽子線治療(※2)を受けましたが、その2年後に右目を失明、右中心網膜動脈閉塞症(※3)と診断されたのです。
本事例は話し合いによる解決を目指して調停が選択され、最終的には660万円で調停が成立しています。
経緯
因果関係の立証が困難なため調停を選択
弁護士が相手方病院で撮影された初回MRI画像の確認を協力医に求めたところ、正常な所見ではなく、その時点で耳鼻科の受診を勧めるべきだったと担当医の過失を認めました。
しかし、仮にそこで手術を受けられたとしても後遺症や再発のおそれがあるとして、因果関係には否定的な見解を示しています。
弁護士はその意見を受け、因果関係の立証が困難なために訴訟は患者さんに不利だと考えました。そこで、当事者同士の話し合いでの解決を目指す調停を選択し、913万円の調停を申し立てます。本事例では眼科の医師が調停委員として紛争解決に関与することになりました。
争点
調停委員の見解によって患者側に有利な展開に
本事例の流れを整理すると、「眼窩の腺様嚢胞がん」を「手術により摘出」、「腫瘍の残存」によって「陽子線治療」を受けた結果「合併症による副作用で失明」という機序が考えられますが、陽子線治療と失明の因果関係の立証が困難でした。
しかし、調停委員の眼科医師は、手術が2年遅れたことで陽子線治療が必要となり、失明はその治療の副作用であるとの見解を示してくれました。患者側に有利な意見を得たことで、弁護士は眼科医師の見解も加味した主張を展開、660万円での調停成立に至ったのです。
- 用語解説
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- (※1)腺様嚢胞がん
分泌腺から発生するがんで、頭部や頸部に発生しやすいとされますが、食道や肺、乳腺、子宮頸部などにも発生します。 - (※2)陽子線治療
エックス線やガンマ線を使用する従来の放射線治療とは異なり、水素の原子核(陽子)の加速エネルギーによる陽子線を使用するのが陽子線治療です。その物理的特性によって、高い治療効果が期待されます。 - (※3)中心網膜動脈閉塞症
眼の奥の網膜に栄養を届ける動脈が詰まる病気です。網膜の視細胞が機能を失うため光を感じることができず、視力に支障をきたします。
- (※1)腺様嚢胞がん

がん見落としへの高い専門性と医療裁判の豊富な実績を持つ弁護士
弁護士法人ALG&Associatesの代表執行役員、東京弁護士会所属。医学博士の学位を保有しており、代表職の傍ら、医療過誤チームを牽引。さらに大学院の医学研究科に在籍し医学の研究を行っています。肺がん、胃がん(スキルス含む)、大腸がん、乳がん等の診断ミスに関する実績を有し、医療訴訟に関する書籍や論文も発表しています。

