【子宮頸がん】妊婦の子宮頸がんを見落とし
このサイトは弁護士法人ALG&Associatesをスポンサーとして、Zenken株式会社が運営しています。
本事例は、下記サイトの情報を参照しています。
※参照元:公益社団法人 日本産婦人科医会公式サイト「 No108 裁判事例から学ぶ 」
https://www.jaog.or.jp/note/妊婦の子宮頸がんを見落とした結果,出産後約1/
事例の要点と結果
不正性器出血があったのに子宮頸がんが見落とされた
患者さんは子宮頸がんで手術を受けましたが、術後の定期検診には行っていませんでした。約3年後、患者さんは別のクリニックを受診して妊娠5週と診断されましたが、子宮頸がんの治療歴を一切告知せず、実は過去6回の中絶歴があったのに1回と虚偽の申告をしていました。
その後患者さんは複数回にわたって不正性器出血を訴えましたが、切迫早産と診断され、子宮頸部細胞診は実施されていません。
妊娠37週で陣痛が起こったため受診すると、子宮膣部が硬く子宮口付近にしこりを認めたため、帝王切開で出産しました。産後1カ月検診では異常なしとされましたが、産後6カ月に不正性器出血がみられ、受診するも経過観察とされ子宮頸部細胞診も実施されていません。
しかし、約1週間後に他院で子宮頸がんのステージⅢBと診断、他院に紹介され治療を受けましたが、約1年後に亡くなってしまったのです。
ご遺族は患者さんが不正性器出血を訴えていたのに細胞診を実施せず、出産時までがんを見落としていたとして提訴しました。本事例は最終的に二審で和解が成立しています。
経緯
相手方、患者側双方の過失が認められる
本事例のポイントは、初診時に子宮頸がんが発症していたのか、発症していたとしたらどの程度進行していたか、一般の産科医が発見できるものか、妊娠中に細胞診を行なうことが妥当か否か、仮に子宮頸がんを発見して治療できても救命が可能だったか、治療歴などを告知していない患者の過失を相殺すべきかなどが挙げられ、裁判所は鑑定人に意見を求めます。
その結果、初診時の超音波検査で認められる腫瘤は前医での治療後に進展したものと考えられ、この時点では少なくともステージⅠBもしくはⅡB期とのことでした。
また、初診時に患者さんの子宮口は閉鎖しており、不正出血に対しては子宮頸がんを疑って細胞診などの検査を行なうべきだったこと、手術(広汎子宮全摘術)が実施されればステージⅡBでも5年生存率は約70%だと考えられるとの見解も示されます。
この鑑定を受けた裁判所は、相手方の過失を前提に4,000万円を支払う内容の和解案を提示しますが、患者側が拒否したため判決に至ります。
一審では鑑定の内容が全面的に採用されましたが、治療歴などを告知していない患者さんにも過失があるとされ、損害額6,000万円のところ過失相殺4割として約3,900万円の支払いが命じられています。
裁判は二審に進み、相手方はがんの進行と救命の可能性、患者の告知義務に関する医師の意見書を提出しますが、裁判所は患者さんの過失相殺は3割程度と判断して和解を勧告、成立に至っています。
争点
患者の情報提供義務違反・診療協力義務違反
本事例の争点で注目したいのは、患者さんの情報提供義務違反ないし診療協力義務違反が認められ、過失相殺がなされたということです。
患者さんの落ち度についても一定の配慮がなされた本事例は例外的であり、一般的には患者さんに多少の落ち度があったとしても、医師の過失のみが争点とされる事例がほとんどです。
がん見落としへの高い専門性と医療裁判の豊富な実績を持つ弁護士
弁護士法人ALG&Associatesの代表執行役員、東京弁護士会所属。医学博士の学位を保有しており、代表職の傍ら、医療過誤チームを牽引。さらに大学院の医学研究科に在籍し医学の研究を行っています。肺がん、胃がん(スキルス含む)、大腸がん、乳がん等の診断ミスに関する実績を有し、医療訴訟に関する書籍や論文も発表しています。