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【乳がん】乳腺エコー、マンモグラフィでの見落とし・損害賠償

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目次

本事例は、下記サイトの情報を参照しています。

※参照元:【PDF】日本乳癌検診学会資料「第22回学術総会 /プレジデンシャルシンポジウム2 乳癌見落しが問題となった裁判例に見るエコー所見 と精査義務」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjabcs/22/1/22_90/_pdf

事例の要点と結果

乳房に腫瘤があったのに再診を指示しなかった

患者さんは右乳房のしこりを訴えて病院を受診、視触診で腫瘤が認められたため超音波検査とマンモグラフィが実施されます。超音波検査では1cm大の腫瘤が認められましたが、マンモグラフィでは良性腫瘍と判断されました。

2カ月後の再診では超音波検査で腫瘤が大きくなっていたにも関わらず、再診の指示はなく、2年後になって乳がんと診断されたのです。患者さんは右乳房切除腋下郭清術(※1)を受けましたが、左側にも乳がんが発見され、右側と同じ手術を受けることになってしまいました。

裁判では最終的に慰謝料、休業補償を含め約1,300万円の賠償が認められています。

経緯

乳房温存手術の機会を失ったことに対する慰謝料

患者側が相手方病院の過失を主張した結果、2カ月弱で腫瘤が増大、形状も変化していたことから精密検査を行なうべきだったとして、相手方病院の注意義務違反が認められました。

また、患者側は診断が遅れたため乳房の温存手術(※3)ができなかったことも主張しています。乳がんは命を救うだけでは足りず、整容性に配慮することも医療機関には要求されます。

乳房を温存できるかどうかによって患者さんが受ける精神的苦痛に明らかな差が生じると考えられるため、診断が遅れたため温存できなかったケースでは、精神的苦痛に対して慰謝料が認められることが多いのです。

本事例は右の乳がんが見落とされましたが、右側の精密検査を早期に実施していれば左側も早期に発見できたはずとして、両側に対して慰謝料請求が認められています。

争点

少なくとも経過観察のための再診は指示すべき

2回目の診察時に精密検査が必要だと判断すべきだったのは間違いないでしょう。確かに超音波検査だけで良性か悪性かを判断するのは困難です。

しかし、わずか2カ月弱で腫瘤が大きくなっていること、マンモグラフィで悪性の疑いがあったことを考慮すると、少なくとも経過観察のための再診は指示すべきです。総合的に考えて、担当医の注意義務違反と言わざるを得ません。

用語解説
  • (※1)右乳房切除腋下郭清術
    乳がんの手術は原則的に腋の下のリンパ節(腋窩リンパ節)も同時に切除します。 リンパ節の取り残しがないように、腋の下の脂肪組織を、重要な神経や血管から丁寧により分けて切除することを言います。この場合、右側の乳房の切除とあわせて行っています。
  • (※2)注意義務違反
    医師の過失を注意義務違反といいます。どのような注意義務があったかは患者側、つまり原告が設定し、具体的に違反を主張・立証しなければなりません。
  • (※3)乳房の温存手術
    乳房をすべて摘出することなく、乳頭や乳輪を残し、がんを部分的に切除し、乳房の変形が軽度で済むように形を整える手術のことです。
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弁護士/医学博士・金﨑氏について

がん見落としへの高い専門性と医療裁判の豊富な実績を持つ弁護士

弁護士法人ALG&Associatesの代表執行役員、東京弁護士会所属。医学博士の学位を保有しており、代表職の傍ら、医療過誤チームを牽引。さらに大学院の医学研究科に在籍し医学の研究を行っています。肺がん、胃がん(スキルス含む)、大腸がん、乳がん等の診断ミスに関する実績を有し、医療訴訟に関する書籍や論文も発表しています。

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