「がんの見落とし」相談ガイド » がんの見落とし・注意義務違反等による医療紛争解決事例 » 【肺がん】集団健康診断や個別健康診断での見落とし・損害賠償

【肺がん】集団健康診断や個別健康診断での見落とし・損害賠償

このサイトは弁護士法人ALG&Associatesをスポンサーとして、Zenken株式会社が運営しています。

目次

本事例は、下記サイトの情報を参照しています。

※参照元:民間医局(株式会社メディカル・プリンシプル社運営)「医療過誤判例集」
https://www.doctor-agent.com/service/medical-malpractice-Law-reports/2007/Vol048

事例の要点と結果

健康診断で肺がんを見落とし、5年生存率が低下

患者さんは自治体病院で個別の有料健康診断を受けたところ、胸部X線検査で異常な影があったにも関わらず担当医が見落とし、異常なしと説明されました。

10カ月後、患者さんは別の医療機関で無料健康診断を受けたところ、肺がんの疑いを指摘されます。1カ月後に他院での胸部CTによる精密検査によって肺がんと診断、紹介先病院で手術を受けました。

本事例は、初回検診での見落としによって肺がんの発見が遅れたため5年生存率が低下したとして、担当医と自治体に対して損害賠償請求がなされました。裁判の結果、400万円の慰謝料が認められています。

経緯

患者さんの精神的損害に対する慰謝料が認められる

患者さんが初回の健康診断を受けた時点の病期は、臨床的にステージIと推定されました。そして手術後にはステージⅡBと診断されています。肺がん治療ガイドラインによると、ステージIの5年生存率は72%、ⅡBでは42%とあり、見落としによって術後5年生存率は30%ほど低下したと裁判で認定されました。

ただし、見落としがなかったとしても5年生存率は72%、つまり死亡率は28%に達しており、相応の不安や恐怖を感じながら生活を送るという意味では見落としとの間に因果関係はなく、経済的損失は認められませんでした。とはいえ、患者さんの不安や恐怖は見落としによって高まっているともいえます。

したがって、類似事案に照らし合わせるなどして精神的損害に対する慰謝料は400万円と評価されたのです。

もちろん、この慰謝料は患者さんの不安や恐怖による精神的損害に対するものにとどまります。もし患者さんの肺がんが再発し、それに見落としとの因果関係が認められれば、改めて相手方に損害賠償の義務が発生することが判決文に添えられています。

争点

がんの見落としがもたらした結果との因果関係

本事例のようながんの見落としと至った結果との因果関係は、主に延命利益の喪失との因果関係として捉えられています。仮に因果関係が認められなくても、見落としによって医師に対する期待が裏切られたこと、適切な治療を受ける機会を失ったことなど、2段階に分けて考えるのが一般的です。

本事例では患者さんが生存していることから、肺がんが再発した場合を想定した一文が判決に添えられていると考えられます。

関連記事を見る
弁護士/医学博士・金﨑氏について

がん見落としへの高い専門性と医療裁判の豊富な実績を持つ弁護士

弁護士法人ALG&Associatesの代表執行役員、東京弁護士会所属。医学博士の学位を保有しており、代表職の傍ら、医療過誤チームを牽引。さらに大学院の医学研究科に在籍し医学の研究を行っています。肺がん、胃がん(スキルス含む)、大腸がん、乳がん等の診断ミスに関する実績を有し、医療訴訟に関する書籍や論文も発表しています。

sponsored by 弁護士法人ALG&Associates監修弁護士よりメッセージ

私たちは、患者さん側の代理人として「患者さん側が勝つべき事件を、いかにして勝ち取っていくか」を大切にしています。「がん」をはじめとする医学に対する高い専門性を持ち、医療事件に関わる解決実績が豊富な弁護士法人ALGの医療過誤チームが、より多くの方々を救済できるよう日々尽力しています。

全国に10ヶ所以上の拠点を構えております。 ご来所が難しい場合は、お電話やオンラインによる法律相談も可能ですので、まずはお問い合わせください。

「がんの見落とし」を疑っている方々へ金﨑浩之弁護士
医学博士